脱毛サロンCMでの曲の起用でCHAIは新たなフェーズに入るのか
ミュゼプラチナムCM【2018 MUSEE ALWAYS FRESH篇_15秒ver.」
CHAIの曲がテレビから流れているなあ、とぼんやり思っていたら某脱毛サロンのCMでした。起用されている「sayonara complex」という曲はスローからミディアムテンポで爽やかで綺麗なメロディで、確かにCMの映像や脱毛サロンが訴求したいメッセージに合致しているのですが、私は凄く意外性をもって受け止めました。
あのCHAIが?ムダ毛処理について「ぎゃらんぶー」でコミカルかつパンチのある楽曲で取り上げたCHAIが?
CHAI / ぎゃらんぶー MV (ちゃんとしたミュージックビデオ Ver.)
CMの起用についてはバンドの一存で決まる訳ではないし、大人の事情だろうという向きもあるかと思いますが、敢えてそこは無視してCHAIが今後何をメッセージとして打ち出してくるのか、CM起用は転換期になるのか考えてみます。
CHAIについての基本情報や経歴は公式サイトその他記事に詳しく掲載されていますのでそちらをご覧いただければと思います。とりあえず個性的で実力があって凄いのが分かるでしょ?
そしてCHAIを語る上で外せないワードが「NEOカワイイ」という概念です。これは「目が大きい」とか「身体が細い」「鼻が高い」と言った一般的にカワイイとされる要素に無理矢理自分を当てはめるのではなく、コンプレックスになり得る要素であってもカワイイのだという主張と結びついています。(とはいえ、CHAIというバンドは「絶対的に主張したい事があるから音楽を手段にする」タイプでも「とにかく目立ちたいor売れたいから面白い事をする」というタイプでもなく、バンドをやりたいしやるからにはちゃんと自分達が本当に思っている事を歌詞にしてコンセプトも付けていきましょう、という割と順当なタイプだと思っています。)この思想を端的に表しているのが「N.E.O.」という曲です。
CHAI『N.E.O.』Official Music Video
とても可愛くて格好良くて元気になる曲!
このように一人一人の多様なカワイイだったり容姿上の魅力を肯定しているCHAIが、脱毛サロンへ通う事を促す立場を取ったように見える…。(それがCMというもの)
元々「ぎゃらんぶー」にしても特に脱毛を否定しているわけではなく、ムダ毛処理はするものという前提で特別何かを表明しているタイプの歌詞ではありません。女性がムダ毛処理だったり化粧をする事が当たり前とされている社会はどうなのか、などという議論までいくとテーマが広くなり過ぎてCHAIが伝えたい事とは次元が違ってくるような気がします。なので脱毛サロンのCMに携わる事自体はそれほど矛盾は感じません。(そもそもsayonara complexの歌詞の中にも「ムダ毛といっしょにバイバイ」ってあるんですけどね)(CHAIだったらムダ毛処理や化粧をしない在り方も肯定してくれそうな気はしますが。)
それとは別に、CHAIの主張に少しだけ引っかかる点もあって。CHAIは可愛いし勇気付けられます。特に世の中的に「カワイイ」とされている一方向に囚われている多くの、ジャッジする側される側双方の概念を書き換えていくという意味で価値がありますし、そもそもCHAIのメンバーが考えている事の全てが歌詞に反映されているとも思っていません。
ただ、実際に今の自分が可愛いと言われたところでどうしても自分自身が受け入れられないという事もあると思います。他人を評価する上で色々なカワイイを認める価値観に非の打ち所はありませんが、他人の容姿ならカワイイと認められても自分だったら違う、という場合はありそうです。
彼女たちにしてみれば、かわいいは「つくれる」ものではなく、「(みんなすでに)なっている」ものなのだ。
https://www.google.co.jp/amp/s/rockinon.com/news/detail/168051.amp
上記の記事の言葉を借りるとすれば、カワイイは「なっている」ものかも知れないけれど、それはそれとして別の種類のカワイイを作っていってもいいのでは、と思います。
単純にコンプレックを気に病んで苦しい思いをしている人にとってはNEOカワイイは特効薬なので大いに活用すべきです。
ただ自分の思っているカワイイと他者から投げかけられるカワイイが同じ種類とは限りません。社会生活を送る上である程度一般の尺度に合わせた方が生きやすかったりもしますし。
自分の元々持っている要素を絶対に活かさないといけないの?というと取り分けCHAIの楽曲でそれを強制されているわけでもないです。寧ろ元々持っている物理的な要素+それをどう処理していくか(=どの程度まで受け入れるのか、どのように変えるのか)という内面的な要素も含めてそのままで良いというメッセージであれば良いなと思います。
ここに来て別バンドの話となりますが、バブル時代をテーマにした女性二人組バンド「ベッド・イン」のインタビューでとても納得感のある言葉がありました。
女の子が男性ウケのいいモテ服を着ていても「男の人にモテたいから着るんです、何か?」って言えたり、「自分好みの服がたまたま男の人ウケがいいだけ」って言えるんであればよくて。(まい)
https://www.cinra.net/interview/201801-bedin
個人的にはバブル時代の文化に興味はなくて、でも演奏とか力強くて格好いいな、くらいの印象だったのですが、このインタビューを読んで好感度が上がりました。私は自覚的な人が好きなので、自覚的な選択を是とする価値観は最高だと思います。
思えば、脱毛サロンに行くという事は自分のお金や時間をそこに掛けるという、極めて自覚的な行動です。そのCMに個性的でおそらく自覚的な活動をしているCHAIの曲、合間に聴こえる「かわいいだけの私じゃつまらない」という歌詞、とてもマッチしているとも言えます。
CHAIというバンドが世に出て来て、NEOカワイイという概念を軸に用いて、それを一番分かりやすい形で「N.E.O.」という曲で提示した時点で「カワイイの範囲を広げてありのままの自分を受け入れる」というメッセージを発信する第一フェーズは終了したのかも知れません。
今公開されている新曲「アイム・ミー」はこれまでのCHAIのイメージを踏襲しながらも、更に明るく屈託がない印象です。CHAIの第二フェーズ、今までのように自覚的に更に好き勝手やっていくのだと思うと今後も注目せざるを得ません。
CHAI『アイム・ミー』Official Music Video
米津玄師「爱丽丝」が攻めてて格好良いし圧倒的な飲み友感ある
一聴した時の表面的な格好良さとか、エピソード消費で曲を楽しめてしまう私は、表題の「爱丽丝」という曲をWALKMANで聴き流しては良さを分かったような気でいたのですが、先日カ一人カラオケ※1 で歌ってみて、やはり凄い曲なのではないかとしみじみ感動を新たにしています。※2
米津玄師 4th Album「BOOTLEG」クロスフェード
フルの動画は無いのでこちらで。
米津玄師さん、色々とタイアップも多くて今最も勢いのあるアーティストの一人ですが、世間的には地上波のドラマ「アンナチュラル」に「lemon」※3を主題歌として書き下ろした事を以って、ある種国民的に認知される存在となったのではないでしょうか。私自身は2年ほど前に「アンビリーバーズ」がラジオでヘビロテされた辺りでちゃんと存在を認識くらいで、それほど詳しい訳でもなかったのですが、4thアルバム「BOOTLEG」は購入しました。
今回なぜ爱丽丝という曲を殊更取り上げるか、というよりそもそもBOOTLEGの購入の動機が爱丽丝が収録されているから、なのですが、では何故そんなに爱丽丝を聴きたかったのかというと(御察しの方もいるかもしれませんが、以前別記事でちらっと申し上げたように、私は八十八ヶ所巡礼というバンドが好きなので)八十八ヶ所巡礼のベースボーカルであるマーガレット廣井さんがベースで参加されているからという理由ですね。
爱丽丝 に携わったメンバーは作詞作曲に米津玄師さん、編曲及びギターにKing Gnuの常田大希さん、ベースに八十八ヶ所巡礼のマーガレット廣井さん、ドラムに元パスピエの矢尾拓也さんという飲み友メンバーで構成されています。新進気鋭感が凄いね!
この楽曲、構成メンバーがお友達というエピソードによる周縁的な付加価値がなくても(つまり、ビジネスライクに召集されただけのメンバーだったとしても)十分聞き応えのある面子です。米津さんは言わずもがな、King Gnuは今キているバンドとしてCHAIと双璧をなすような存在になっているし(多分)、八十八ヶ所巡礼は業界内評価がめちゃくちゃ高いバカテクバンドです。(残念ながら私は矢尾さんについてあまり存じ上げないので、この後の文章には殆ど出て来ません。申し訳ありません。でも仲いいですよね)
おそらくなのですが、このメンバーは色々な音楽家の中でもかなり独自の個性を持つ、ある意味癖が強いタイプの人達のように思います。普段から歌を歌っていたり、それぞれのバンドの中心メンバーだったり。爱丽丝という曲の素晴らしい所は、それぞれのメンバーの独自性が失われる事なく、一つの楽曲として融合している点です。
米津さんは、ストレートに爽やかだったり美しい感じの毒気のない歌詞も書かれますが、ちょっと衒学的で幻想的なタームを使ったシニカルなタイプの歌詞を書かれるイメージがあり、本作はまさにその方向性となっています。サウンドも歌詞の世界観に合った、これまでの米津さんのイメージと齟齬のない曲調です。
八十八ヶ所巡礼の曲は、リズムを刻むというより旋律を作っているようなうねるベースラインが特徴的なのですが、本作でも遺憾無く発揮されています。敢えて他人の名義の曲だから特徴を矯める、という事がされていません。
冒頭のベースが端的に特徴を表している、且つ色々な意味で最も癖が強そうな動画はこちら。
ギターについてはマジでKing Gnuです。めっちゃKing Gnu(語彙力)。何がと問われても説明出来ませんが音色でしょうか?取り敢えずYouTubeとかでKing Gnuの曲数曲聴いて下さい。取り敢えずこの曲とか。
2番が終わった後の間奏部分の事をハイパーキングヌータイムと命名しています。ここだけを聴いてKing Gnuの曲と言われたら納得しそうです。
曲全体としては米津作品なのにベースはマーガレット廣井だしギターはKing Gnu!!※4 なんか凄い事が起きている気がする。(語彙力)
元々「誰某が他の誰某のレコーディングに参加!」という類のニュース、盛り上がってていいなとは思いつつ、その価値はいまいちピンときてなかったんですよ。私の耳が悪いだけなんですけど、そこまで個々のプレースタイルがどうとか音源だけで聞き分けられないし、平素がそれならコラボした時の機微みたいなニュアンスみたいなのも分からないし。
でも逆にここまで個性の強い人々がそれをそのままぶつけてきたら流石にわかります。こういうの化学反応などというのでしょうが、寧ろ何でちゃんと一曲に綺麗に纏まるの?という驚嘆を覚えます。
ここまで来て矢尾さんのドラムについて何も言えないのが悔しくなってきたので聴こうかと思うのですが昔のパスピエを聴いたら良いのん?
以前に伊坂幸太郎さんと阿部和重さんが共著「キャプテン・サンダーボルト」を執筆した時のエピソードで、「お互いが最初に書いたパートにもどんどん修正をかけたので、どの部分がどちらとかは分からない、霜降り状態」と仰っていたのが面白かったのですが、曲の場合最終的な役割が分かれているのでどういう表現が適切なんでしょうか。サラダボウルでもメルティングポットでもないし、あれです、鮪とアボカドとクリームチーズを出汁醤油と辣油で和えたやつですね。
ここまでが掲題の「攻めてて格好いい」についてでしたが、ここから「圧倒的な飲み友感」について述べて行きます。駄文を極めていきますので、真っ当な歌詞解釈をお読みになりたい方は下記のブログを参考になさってください。
全体としては「不思議の国のアリス」※5 をモチーフにした米津節を強く感じる歌詞なのですが、注目すべきはサビの部分です。
曖昧な意識で彷徨った 摩訶不思議なアドベンチャー
虚しさを抱えたまんま 愛を使い果たした
何の話をしていたっけ フラついて零したブランデー
全てを明日に任せて踊ろうぜもっと
確実に飲み会が開催されている…ような気がする!
「曖昧な意識」、飛ばし飛ばしの記憶にループする話題、制御し損なった身体、「ブランデー」。数ある酒類の中からブランデーというところがお洒落ではありますが、それにしても米津さんが飲酒をモチーフにした曲を書くとは思いませんでした。
酒の歌は世の中に数あれど、コンスタントに飲酒がモチーフの曲をリリースしているバンドといえば八十八ヶ所巡礼を置いて他に居ません。とはいえ、マーガレット廣井さんも八十八ヶ所巡礼名義ではない活動で、酒を前面に押し出してはいないはずです。今回は米津さん名義の曲で米津さんが作詞をする訳ですから、酒要素など全く期待していませんでした。
ところが蓋を開けてみれば飲酒の歌。何という酒に関する引きの強さ、安定感。ありがとう米津さん。ありがとう飲み友。
と、まあ巫山戯た感想を持ったのですが、結果的に廣井さんが外部でも飲酒の歌に携わった妙もさることながら、やはりこの曲を作ったメンバーが飲み友だったという事、飲み友たちがコミュニケーションをとりながらプロの仕事をして格好いい曲を作ったという事が有難い限りです。そもそも私はBOOTLEGの中で、純粋に曲調だけで言っても爱丽丝が一番好きなんですよ。飲み友とか関係なく、好きな音楽家達で作った曲だったらそれは気に入るに決まっています。…何の話をしていたっけ。話がループしている。酩酊してないのに。
※1 ヒトカラ専門店だと部屋が狭くヘッドフォン式で歌うことになるので、一般的なカラオケの方が快適
※2 カラオケ再生だとKing Gnu色の強いギターの音色が引っ込みベースラインが際立つ。また歌う際に歌詞の詳細やどんな字面なのかを改めて知る事が出来て味わい深い
※3 私の中でアンナチュラルの脚本が素晴らしすぎたのでどうしてもlemonという楽曲単体での評価が出来ません
※4 この一文で個人名とバンド名どちらにするか統一しなかったニュアンス伝わりますでしょうか。そもそも常田さんが編曲をしている上に、ギターという楽器の音自体が耳に付きやすいからではあるのですが、何となくKing Gnuはまあ常田さんのバンドだろうし、八十八ヶ所巡礼は三人揃ってこそだろう、というイメージがあります
※5 爱丽丝という曲名は友人である水墨画家のCHiNPANさんのタトゥーシールから付けられた、との事ですがCHiNPANさんは八十八ヶ所巡礼の楽曲「金土日」のMVに文字提供をされています
知人に自分の趣味を教える事
前回、見知らぬ赤の他人に自分の趣味を知られる事について書いたのですが、今回は知人に対してはどうか、というお話です。
もう一生会うこともないであろう通りすがりの赤の他人であれば、その瞬間どう思われようとそれで終わりですが、関係の続く人物に対しては対応が難しいところがあります。
以前「苦手な人、あまり好きじゃない人に自分の好きな趣味について知られたくない」という話を、仲が良い割と趣味の話ができる職場の人にしたら面白がられましたが、これは結構特殊な考え方なのでしょうか。元々好感を持っている人に対してであれば、好きなものに同意されれば嬉しいし盛り上がれる。仮に同意されなくてもよっぽど酷い否定のされ方をしない限り、まあそういう人もいるか、で終わります。反対に苦手な人の場合、同意されなかったら否定された様で苛っとしそうだし、同意されたらされたで何か癪に障る気がします。
未だお互いにあまり知らず、薄っすら苦手かも程度なら、趣味が同じ事で一気に関係が改善される余地はありますが、自分の中で評価が定まっている人に対しては、お互い無駄に嫌な思いをしない為にも、敢えて自分の好きなものを開示する必要はないように思います。
そういう理由で自分の好きな趣味、特に否定されたらムカつきそうなものに関しては、ある程度見極めを行なった上で開示をするようにしています。
しかし、最近は別の理由でも少し開示を躊躇う時があります。相手にとって「その趣味のファン=自分が代表」問題です。
旅の恥はかき捨て、という言葉がありますが、その反対に「訪問先の土地の人にとっての日本人(などという属性)は自分の印象で決まってしまう事もあるのだから、日本人を代表していると思って恥ずかしくない行動をしよう」という考え方もあります。
それと同様で、その人のなかで(任意の趣味)が好きな人全体の印象が自分の行動によって決まってしまうのではないかという考え方です。
音楽フェスにおけるジャンルやバンド毎の文化の違いによって起きるファン同士の軋轢などの話は沢山聞きますし、そういう趣味の現場でのマナーは、見知らぬ人同士のマナーと同様に気をつければいいと思うのですが、日常生活においては気をつける事が多岐に渡りそうです。
どの趣味のファンであれ、良いヤツもいれば悪いヤツも居て、もっと単純にいうと自分とウマが合う人も合わない人もいます。メジャーな趣味であれば、自分以外のファンの存在を知っている可能性が高いので、責任が分散されますし、その趣味自体の印象は悪くならなさそうですが、そうでないもののファンだと、相手の知っている(任意の趣味)のファンは自分一人という事も有り得ます。
そういった時に、特別相手に悪意を持った行動をしなくても、「あの人自分は経済回してますみたいな顔してピリピリしてるけど、やってる事雑用レベルじゃねえか、アイツより基本給低いのかよやってらんねー」とか思われる可能性がゼロではないと思うと、ちょっと慎重にならざるを得ません。
(まあ、誰かが周縁的な業務を担うことで得られる全体の利益についてのコンセンサスとか、自分の給与が何の対価だと思って働くと気持ちの折り合いがつくか、みたいな事はありますがそれは別のお話)
そういう訳で、ウッカリ推しの印象を人質に取られた気分にならないように、新入社員の前で好きなバンドについて喋るか喋るまいか迷っている私です。趣味は合いそうな気がするのだけど。
そんな事より新入社員に、そして職場の人に優しくなろう。そうしよう。
通りすがりの他人に趣味を垣間見られる事
何年か前にツイッターで#bookspyというハッシュタグが結構長期的なスパンで流行りました。外出先で本を読んでいる人を見つけた際に、本のタイトルや著者名、ざっくりとしたその人の属性とともにハッシュタグを付ける、という使い方です。例えば「〇〇電車内、学生風の男性、グリーンのモッズコート、(著者名)『作品タイトル』」というベースの情報に適宜「三分の一程度の進み具合。読んだことあるけどここからが面白い」とか「サラリーマンがこういう本を読んでるの意外」などといった所感を付け加えてみたりします。個人特定出来ない範囲とはいえ見方によっては悪趣味といえなくもないタグですが、ツイート内容自体は淡々と、あるいは好意的なものがほとんどで、主に通勤通学中の手持ち無沙汰な読書家達のひっそりとした楽しみだったように思います。
私自身もこのハッシュタグのツイートを眺めたり呟いたりして楽しんでいましたが、自分が出先で読書をする時はどうなのか、というと完全にブックカバーでガードの態勢です。お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹氏が「読んでいて恥ずかしい本なんてない(だからカバーはつけない)」とおっしゃっていたような気がするのですが、どうにも自意識が邪魔してその境地には至れないままです。なまじ自分が#bookspyなどを使った事があるだけに「ベージュのトレンチコートの20代女性、東野圭吾を読んでる、文庫本最新刊人気だなあ」などと思われるのが分かってしまいます。
東野圭吾氏にも氏のファンの方にも何の恨みもなく引き合いに出して恐縮ですが(そして東野圭吾氏の本は大抵面白い)、あまりにも絶大なベストセラー作家の作品や比較的ライトめな作品を読んでいる所だけ切り取られると「今はそうだけど、いや、違うねん…」という気持ちになります。これは娯楽系の作品だけでなく、純文学の古典名作系(漱石とか太宰とか川端康成とか…?)でも作品によってはちょっと、という気になってくるので複雑な心理だなと思います。
ブックカバーを付ける理由は主に、何の本を読んでいるかを知られない為、ではあるのですがもう一つ大きな理由があります。
それは装丁自体を隠す為です。最近は少なくなったのかもしれませんが、たまに凄くダサい装丁がありますよね。池井戸潤氏の「半沢直樹」が映像化する以前の「オレバブ」シリーズなどは、企業小説を読みそうな中高年男性が、自分がターゲットだと認識する目印になるように敢えてコテコテなイラストにしていたりなど理由があるようですが、自分の持ち物としてはデザイン的にどうかな、という装丁はカバーを掛けたくなります。企業小説はともかく、昔家にあった赤川次郎氏の全然美人に見えない「三姉妹探偵団」シリーズなどには憤慨しました。
あとレアケースかもしれませんが装丁で他の人を攻撃しないように、という理由の時もあります。「ドグラ・マグラ」の角川文庫版とかちょっと怖いし猥褻物陳列にならないか心配です。実際は書店で陳列されているので大丈夫なはずですが攻撃性の高すぎる装丁です。阿部和重氏の「インディビジュアル・プロジェクション」(新潮文庫)とかもパッと見お洒落感がありますがちょっとアレだなあとかありますね。
最近は本に関してもCDなどに関しても(真冬にスタバでフラペチーノを注文する際も)、店舗で購入する際は堂々と出来るようになってきました。店舗側が商品として提供しておきながら、客側が購入を希望すると蔑むなんてあってはならない事だと思うと気が楽です。
ただ、未だに店頭で気後れがする時があるのは、コンビニでのチケット発券です。チケット自体はコンビニの商品ではないですし、マイナーめなバンドのイベントなど、コンビニの店員は存在自体知らない訳です。無数のイベントの発券をこなす店員が毎回何らかの感情を抱くとは思えないし、チケット名を読み上げられないのが救いですが、「泥沼の」とか「大惨事」とか書いてあると一体何を観に行くんだ、という気持ちになりそうです。いや、全然観に行くけど。
複数組のバンドやアーティストが出演し、リリースやら周年記念やらの特別な開催する理由がないイベントの場合タイトルには苦慮しそうです。特定のバンドが主催する形を取らないタイプのイベントは結構勢い任せの雑なネーミングがあるような気がします。たまに会場のスタッフの方の名前を冠したイベントなどは誰だよと思ったりもしますが、そもそもマイナーめなバンドのメンバーも一般的には誰だよになるので仕方ない気がしてきました。
一番良いのはシンプルに「『曲/アルバム名』リリースツアー」です。これで仮に『』内がふざけたタイトルだったとしたら仕方がありません。アーティスト側が満を辞して決定した作家性の発露ともいえる作品名に文句をつけるのは野暮ですし、鉤括弧でエクスキューズできます。
時々、作品名ではないのにアーティスト側の悪ふざけみたいな語感の面白さか内輪ネタで決めたようなツアータイトルがあります。自分達だけのイベントだからこその自由度の高い命名だと思うのですが、ラジオでおじさんDJがそのタイトルを紹介しているのを聴くとちょっと居た堪れない気持ちになります。
今のところそこまでウッとなるイベントにはあたってないし、行きたいイベントには結局タイトルがどうあれ行くのですが、ワンマンにせよツーマン以上にせよ、もし可能であればイベント名にはフラットな単語を使って頂けるとありがたいです。フラットな単語でもイベントの雰囲気やアーティストの世界観を表せるタイトルはつけられるはず。それかせめて鉤括弧、鉤括弧の活用をお願い致します。
QOLを上げる普遍的過ぎるツール3選
"クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life、QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。" Wikipediaより
ここ数年、QOLという言葉を医学用語以外でもしばしば聞くようになりました。本当に流行り言葉なのか私の耳が遅いだけなのかは分かりませんが、ここ最近紹介されるQOLを高めるツールは、必ずしも持つ必要のない家電製品や〇〇社製の××という商品、といった対象となる人が限定されるものが多いように思います。
そこで敢えて今回は、近年私が導入しQOLを向上させた「昔から存在するけれど意外と持っている人と持っていない人に分かれる普遍的なツール」3選をご紹介したいと思います。
①靴ベラ
革靴を履く男性には必需品かもしれない靴ベラ。実は1〜2年前まで持っていませんでした。基本的にパンプスを履くことが多いので今でも使用頻度は高くないのですが、スニーカーを履くときに使うとQOLが高まります。毎回靴紐を結び直したり無理やり履いて指を痛めなくて良い。圧倒的な時短を達成。外出前に幸先の良いスタートを切れるアイテム。
②帽子
画像は今冬流行った飛行帽です。菅田将暉みたいな帽子、として認知・一気に人口に膾炙しましたね。私が導入したのは飛行帽ではありませんが。
帽子なんて子どもの頃散々かぶる機会があったはずなのに、いつからかぶらなくなってしまったのでしょうか。気が付いたら日差しがきつい中で長時間活動する時やとても寒い場所に行く時など、必要十分な条件が揃った時導入するものという意識が植え付けられていました。何もない時にかぶるのが何か衒っているような気になってしまったというか。大して似合わないし髪の毛ぺちゃんこになるし。
導入してみると夏は日差しを凌げるし冬は暖かくて便利。そして分かりやすくちゃんと服装に気を遣って外出する人になれる。服や靴は基本的に皆が必ず身につけて外出しますし、いくら上質なものを纏ってもこだわりの一着を着ようとも、気付かれない時は気付かれません。しかし帽子に関して言えば身につけてもつけなくてもどちらでも良いアイテムです。それを敢えて身につけることで、もう立派な意識的に出掛けている人になれます。
内面的にもシャンと出来る、対外的には横入りとかの赤の他人からの理不尽が若干減った気がする、暑さ寒さも凌げるというQOL爆上げアイテム。
③脚立
長谷川工業(Hasegawa) 軽量踏台 3段 (定番) SE2.0-8(79cm) (16841)
- 出版社/メーカー: 長谷川工業(Hasegawa)
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電球が換えられる。高い所のものが取れる。もうキャスター付きの椅子という不安定な足場で作業しなくていい。キャスター付きの椅子より簡単に運べる。ストレスの軽減と時短による圧倒的なQOLの向上。身長の足りなさを2000円程度の金で殴って補える。あと数センチ身長が高ければなどといったしょうもない事で悩まなくていい。スムースな動作への移行を達成。KTT !KTT !
今回のテーマで3つ選出するのに脚立と帽子はすぐ決まったのですが、あと一つは迷いました。次点で電動歯ブラシ、マウスウォッシュ、ドライバーなどが浮かびましたが、電動歯ブラシとマウスウォッシュはちょっと嗜好品っぽさがあるのと、ドライバーはもう利便性の為に存在している風格や結局ネジを回す機能に特化している点を考慮し靴ベラにしてみました。
普遍的過ぎて意外と持ってない人がいても話題にもならないけど便利!っていうもの、無意識のうちに既に導入していそうですが、QOLに対する寄与に気付いた時が一番嬉しいのかも知れません。
「ゴールド巡礼」というカクテルを作りたかったのに、ウォッカトニックを魔改造したお話
前回、また酒屋チェーンに行ったお話をしたのですが、実はもう一つ購入したものがありました。
それがこちら。
今までアルコールばかり購入していたのに何故だ、という感じですが実は理由があります。
このタイミングでこの紹介の仕方、自分でもどうかと思うのですが、私は八十八ヶ所巡礼というバンドを非常に推しております。私は音楽的な素養も知識もないので、どうしてもバンドの話をしようとすると歌詞からしか論じられず片手落ちな気がして、中々八十八ヶ所巡礼の事を記事に出来ずにいるのですが、取り敢えずロックミュージックやプログレを聴かないという人も酒呑みなら楽しめる味わい深いコンテンツ、アル中アルアルシリーズをチェック!
マーガレット廣井 (@margarette_77) on Twitter
私が八十八ヶ所巡礼に嵌ったのは色々経緯はありますが、結局の所「仏教」「酒」というファクターがあってこその取っ掛かりだと思うので、作詞者であるマーガレット廣井さん様々です(作詞以外も色々このバンドは凄いんですよ)。
そして、そのマーガレット廣井さんとお笑い芸人のゴールドラッシュ・どいちゅーさんが先日2回目の「ゴールド巡礼」というトークライブをされたそうです(未だにちゃんとトークライブをしているイメージがつかない)。その際に会場で販売していたというその名も「ゴールド巡礼」という飲料が気になって仕方ありませんでした。レシピの考案には廣井氏もどいちゅー氏も関わっていないとの事ですが、グラスのそこに薄っすら溜まった淡い紫色がとても綺麗でした。そこでそのトークライブを観覧していた方にお伺いしたところ、バニラ風味のリキュールにハスカップの何かを混ぜたもの、という回答を頂きました。幽子様(888888_88_)有難うございました!!
酒屋チェーンに行くついでにこちらも再現してしてみようと、リキュールコーナーを探してみたのですが…バニラリキュールが見つからない…!取り敢えずスマホで検索して何種類か候補に挙がるのですが、同じ物が全く見つからない。もうバニラは諦めて、透明で癖のない飲料ウォッカを買うしウォッカトニックをハスカップ風味にすれば良いのではないか、という雑な考えになりハスカップジュースを探したのですが、それもありませんでした。
そこで今一度ハスカップとはどんな味か調べてみたら、ブルーベリーに近いという事が分かりました(ハスカップといえば北海道土産で時々口にする程度だったので確認が必要でした)。
そこでハスカップはブルーベリーで代用することにしました。ブルーベリージャムを溶かせば良いんじゃない?ウォッカだし、紅茶にジャムを混ぜたらロシア紅茶だからめっちゃロシア感増すじゃん、という頭の悪い発想です。もうゴールド巡礼の影も形もありません。
という事で意気揚々とジャムより溶けやすそうなコンポートを購入しゴールド巡礼魔改造verを作ることにしました。
コンポートは溶けやすいのですが低糖度のようで、大さじ一杯は入れないとブルーベリーの風味はしません。味を馴染ませるためにステアするので全体が紫色になります。愈々ゴールド巡礼の影も形もありません。ただのウォッカトニックブルーベリーコンポート味です。
ゴールド巡礼はおそらく口当たりの良い甘いカクテルだったかと予想するのですが、こちらは色のどぎつい印象に反して仄かにブルーベリー風味の味となりました。あまり覚えていないけれど、札幌で買ったいろはすハスカップ味もこんな感じだったと思う。
よく、料理に求められる資質とお菓子作りに求められる資質は全く異なる、と言います。料理に求められるのは段取りや効率化、臨機応変なアレンジ力ですが、お菓子作りに求められるのは緻密さや物理的な再現力(=腕力?)、忍耐強さです。カクテル作りに求められるのはどちらなのでしょうか。私自身は(大して出来る訳でも無いのですが)どう考えても料理向きです。料理向きのマインドでカクテルを魔改造しましたがこれが功を奏したのか…皆様がゴールド巡礼ロシアverを作ってみて頂ければ分かるのかも知れません。
決して皆様にお勧めして責任を取るつもりは無いのですが、スッキリした味が好きな私としては別に不味くはなかったという事を申し添えつつ、八十八ヶ所巡礼の仏滅トリシュナーをお送りしながら締めさせていただきます。
大型酒屋チェーンで休日を彩る【リキュール編】
以前に、暇が高じて大型酒屋チェーンでの遊び方についてご紹介させていただきました。
向学心がないので、水やソーダで割るかそのまま飲めるお酒ばかり買っていたのですが、この度遂にリキュールコーナーデビューをして参りました。
というのも、友人318さんのこちらの記事を読み、 紹介されているゴッドファーザーというカクテルが無性に飲みたくなったのです。
小説をきっかけにカクテルを飲むなんて羨ましい限りのエピソードですが、確かに飲んでみたくなる素敵な文章(ストロングゼロ文学に触発されてストロングゼロを購入する筆者とは雲泥の差)。そして、家にスコッチウィスキーはあるからシシリアンキスは無理でもゴッドファーザーなら作れそう、という安易な考えから再び大型酒屋チェーンに向かうわたくし。
購入したのはこちら。
ついでにゴッドマザーも作ろうとウォッカも買いました。
氷を入れたグラスに、アマレット15mlに対しウィスキーを45ml入れるのがゴッドファーザー、ウォッカを45mlであればゴッドマザーです。
アマレットの味が強いのでどちらも甘味が勝った味になりますがゴッドマザーの方がスッキリした味わいです。
水やソーダで割るのに慣れていると、アルコールをアルコールで割っている気分になりますが、当然同じ様には飲めないのでチビチビ味わいながら飲みます。休日の昼下がりにぴったりの楽しみ方ですね。平日用にアルコール以外で割るレシピも調べていきたいです。
ストーンズジンジャーワインは、以前ジンジャエールで割るとジンジャージンジャーというカクテルになるとお店で教えてもらったので今回購入しました。ストーンズジンジャーワイン自体が甘いので、大体他のお酒の水割りと同じくらいの割合で、ジンジャエールで割ると丁度甘過ぎないくらいの味になりますが、お好みで調整されると良いかと思います。非常に飲みやすいのでお薦めです。
ちなみに今回気になって購入を見送ったのがコレ!
ニルヴァーナ プレミアムココア リキュール。
商品名もラベルもそそる要素しかない。でもぜっったい飲まないから止めておきました。(チョコレート系とコーヒー系のリキュールは合いそうな気がする、けどそれ以外の組み合わせが思いつかない)このリキュールについてネット上に中々情報が載っていないのですが、何故チョコレートのリキュールにこの名前なのでしょうか。果実系なら絶対買ってた。もしかして泥の中でも蓮の花が咲く、みたいなエピソードから泥に見立てたとか…?だったら嫌すぎるな…。
というわけでリキュールを大量に仕入れたので暫くはお酒に困らなさそうです。他のオススメの飲み方があれば是非ご教示下さいませ。