思念が奔逸中

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2018年下半期に観た映画レビュー

2019年度が始まって早半月近く。ずっとサボってきた映画レビューですが、半年分一気に片付けます。流石に時間が経ってるのでアッサリめです。

 

クレイジーリッチ!

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主要登場人物が全員アジア人という、ブラックパンサーに続いて人種面で社会的に意義のある作品。すごく楽しみな反面、単に全員アジア人を揃えただけで内容的には凡庸なラブコメなのでは…?という危惧もありましたが、ラブコメしつつ薄っぺらでない内容で満足しました。

ストーリー的には、「一般人だと思ってた彼氏が実は大金持ちだった!」という王道なもので、日本のドラマ「花より男子」に言及した紹介も多かったように思います。あと個人的にはアン・ハサウェイの「プリティ・プリンセス」とかが(こちらは彼氏ではなく自分自身がランクアップするけれど)ノリ的には近いのかな、と予想していました。ただ本作の主人公レイチェルは30代の経済学の教授です。最早地味で冴えない少女ではなく自分自身で積み上げてきたキャリアのある大人の女性を主人公にという所が、目新しさもあり重厚感のあるストーリーになったのかなと思いました。主人公が10代だとどうしてもひたむきさや誠実な人柄が決め手、という流れになりがちです。本作でも前提としてそれがありながら、これまで培ってきた知識で応戦する辺り爽快感が倍増します。観る前は正直、女優さんも綺麗だしこんなにスペックが高い設定で、いくら相手方がシンガポールの財閥とはいえ見下される展開ってどうなのよとちょっと思っていましたが、見てみるとちゃんとレイチェルは一般人に見えるようになっています。財閥側は見た目もゴージャスだし本当にバカみたいにお金を使って愉快です。それに対してレイチェルはチャーミングで賢くて応援したくなる人物造形です。レイチェルと彼氏の家族側は例によって対立する訳ですが、家族側の描き方も「とりあえず敵役として憎たらしい姑や小姑キャラを置いておこう」というノリではなく、それぞれ背景を持った人物となっており、アジア人とアメリカ人という対比も描かれ、説得力のある展開でした。

個人的には、オーシャンズ8に出演していたオークワフィナが出ているのも楽しみでした。レイチェルの大学時代の同期ペク・リン役でしたが、オーシャンズの時よりも台詞が多くコメディエンヌ感が増し増しで、出てくるとホッとする役柄です。髪型はあんまりやったけど。終始レイチェルに味方してくれ手厚い協力もしてくれるペク・リン。レイチェルは大学時代余程恩を売ったのだと思う。

あとこの映画、観終わったら絶対餃子食べたくなる!飯テロ!!

 

サーチ

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「クレイジーリッチ!」を観た時に予告編で見てめちゃくちゃ気になって公開後すぐに鑑賞。全編通してPCやスマホなどの端末の画面がそのままスクリーンに映し出されるという斬新なアイディアの作品。もちろんそのアイディアを完遂する為だけの作品にはならず効果的に作用しています。展開もですが、端末を操作する人の心理も読み取れるディティールが絶妙(長文を書いて一気にバックスペースで削除とか)。もしかしたらその縛りの為に多少無理のある流れにしている所もあるのかも知れないけれど、日本人としてはアメリカ人FaceTimeとかの顔が見える手段好きそうだし良く使いこなすなーくらいの気持ちで見れました。話の大枠としては突如行方不明となった娘を父親がウェブ上の情報を辿って探す、というものです。この家族は韓国系アメリカ人なのですが、アイデンティティ云々などの話はないし、別にこの家族が韓国系でなくても物語は成立します。監督がインド系ということもあり、映画界的にはマイノリティ主体の俳優起用という潮流の中にあるのかも知れません。「クレイジーリッチ!」がアジア人である必然性がある物語に主要キャスト全員アジア人を起用したという成果を挙げたのと対照的に、人種関係なく成立する普遍的な物語の中心人物に何の説明もなくサラッとアジア系を据える、というその先の進歩が見えた気がしました。

これから本作を見るのであれば、それこそソフトやアプリの流行り廃りはがあるので、あまり古びないうちに観るのが吉かなと思います。端末状のフルスクリーンを実際にPCで見れたらそれこそ臨場感がありそうだけど、端末上の細かい動きと字幕の両方を追うので私は映画館で観れて良かった派です。心配な方は大きめの画面で是非。まあでも一番の衝撃は高校生の娘役だった女優が30歳とかだった事ですね。いくら東洋人が若く見えると言っても驚き。めちゃくちゃ化粧覚えたてのティーンエイジャー感が出てたし全然分からなかった!

 

 

音量を上げろタコ!(音タコ)

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バンド「八十八ヶ所巡礼」の面々が少しとはいえ出演されるらしい、と知りどうにかこうにか鑑賞いたしました。正直な所、冒頭からひと段落するまでは絵面が汚い感じだったのと特定のキャラクターを無駄に痛めつける設定にしているように見えて苦手かも…と思ってしまいました。あと序盤は割と冗長な描写が多かった印象です。しかしそこを乗り越えると最初の露悪的な感じはそこまで引きずっていなくて安心しました。この映画、興行成績はあまり振るわなかったようです。確かにごく一般的な話の展開が整った映画に比べるとカオス度が凄いです。主人公(吉岡里帆の方)の性格に一貫性やリアリティはないし、台詞も割と台詞回しっぽい(いくら女性キャラでも今時「〜だわ」とかめっちゃ台詞やん)のも苦手な人は苦手かも。でも私は途中で考えるのを止めたら楽しめました。何故今そういう展開になっているのか、裏でどういう繋がりがあって今のシーンに辿り着いてるのかなどは一切気にしたらダメなやつです。色んなキャラクターがでて細かい疑問が出て来ますが基本的に最後まで回収されません。この作品は途中から少し雰囲気というか舞台や展開が変わるターニングポイント(88の面々が出た後辺り)があります。その展開がまあ唐突だなーという印象だったのですが、実は大きい目でみると最後で作用してるので私のガバガバ判定では伏線回収はやってます!(観た人は分かるはず…伝われ!)本作は「パンク侍、斬られて候」と比較して言及される事もあるようです。両作ともぶっ飛んでいて、とりあえず流れに乗って見とけ!というタイプなのですが「音タコ」の方がよりエントロピーが高いです。「パンク侍」は原作が町田康で脚本が宮藤官九郎。原作がある以上、そのエッセンスを汲みながら今の時代や映画という媒体に最適化し落とし込んだ形です。対して「音タコ」は原作がなく監督と脚本家が兼任。とにかくやりたい放題で、しょうもない台詞も言いたければ役に言わせるし、色々放り投げては風呂敷を畳まなかったりします。

 

malily7.hatenablog.com

 

で、この映画のメッセージは一応一貫して「やらない為の言い訳を探すな」だったと思うのですが、何というか全体的な映画のカラーの割に凄く真っ当というか単純というか、陽の要素が強めで間口が広い感じがします。「パンク侍」は元々原作が持つイメージの上にちょっと(わかりやすく)玄人好みっぽいキャスティングとその延長線上っぽい刺さる人に刺さるプロモーションの仕方、何となく哲学みのありそうな後で咀嚼が必要なメッセージが合致していて、興行成績的には分かりませんが、観た人の満足度は高いようでした。一方で「音タコ」は「吉岡里帆阿部サダヲ千葉雄大!ハイドやあいみょんの楽曲提供!前向きそうな青春ぽいテーマ!」から入ってみると何となく残念な感じになり、パンク侍的振り切れに期待をしていた人には物足りない印象になってしまったのではないかと思ってしまいました(あぁ今めっちゃ小賢しいこと言ってるな)。何か軽くディスった感じになったけれどとにかく楽曲が格好いいし、阿部サダヲがイケメンに見えてくるし小ネタが効いてるし楽しかったです。そして何より88を起用して下さったので大感謝です。思ったより尺が長かったしそれなりに意味のある役割だったように思うし、いつもと少し違う感じの衣装や女性ボーカルを迎えている新鮮味も良かったです。観るのに一生懸命で提供した楽曲は全然覚えていないのが残念ですが。

 

ボヘミアンラプソディー

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元々はクイーンそれほど知らないし観なくてもいいかなぁと思っていたのですが、余りにも人気なので気になって鑑賞。時間の関係で4DXの会場で見ることになったのですが、結果的には大正解でした。ライブシーンの臨場感が凄かった。史実ではライブエイド時にフレディに病識はなく、前のライブから間が空いているわけでもなくこなれたパフォーマンスだったと聞いていたので、あくまでもその辺りの時系列の操作はフィクションだなーと思いながら観たのですが、それでもライブシーンの熱気や俳優達の気迫が圧倒的でした。そして恐らくバンドマンあるあるであろうレコーディング時の流れがいい時の盛り上がりや小競り合い、レーベルとの対立などリアリティがありワクワクするエピソードの積み重ねがカタルシスを生んでいるなと思いました。

 

刀剣乱舞

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後輩に誘われて鑑賞。刀剣コンテンツは年末の紅白歌合戦で観たのを除いて初めてでした。キャスティングは刀剣乱舞の舞台に出ている俳優を中心に、刀剣は一部他の俳優に変更。武将役は八嶋智人山本耕史と言った有名どころの実力派を起用しています。観る前に最低限刀剣乱舞の世界観について予備知識を入れてから観ましたが、それがなくても十分理解できる作りでした。ストーリーは映画オリジナルとの事ですが、刀剣乱舞ファンの後輩もそうでない私も納得の良くできた筋です。刀に詳しくない私は当初名前が覚えにくいと感じていたのですが、それぞれの刀剣のキャラクターがわかりやすく直ぐに見分けられるようになりました。個人的には短刀は短パンを履いているというのが面白かったです。刀剣男子達の出で立ちは髪色がカラフルだったり二次元コンテンツ的な服装、建物などの空間も基本は和の設えで衣装に比べると従来の時代劇らしさがありますが、やはり独特のニュアンスがあったり現実離れした光景など、歴史改変SFらしい空気感のビジュアルです。全体的に見応えのある美しい絵面が多いと感じました。こういう今まで自分に馴染みのなかったコンテンツの映画版、興味が多少あっても自発的には行かなかったらするので、誘われて良かったなと思いました。