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米津玄師「爱丽丝」が攻めてて格好良いし圧倒的な飲み友感ある

一聴した時の表面的な格好良さとか、エピソード消費で曲を楽しめてしまう私は、表題の「爱丽丝」という曲をWALKMANで聴き流しては良さを分かったような気でいたのですが、先日カ一人カラオケ※1 で歌ってみて、やはり凄い曲なのではないかとしみじみ感動を新たにしています。※2


米津玄師 4th Album「BOOTLEG」クロスフェード

フルの動画は無いのでこちらで。

 

米津玄師さん、色々とタイアップも多くて今最も勢いのあるアーティストの一人ですが、世間的には地上波のドラマ「アンナチュラル」に「lemon」※3を主題歌として書き下ろした事を以って、ある種国民的に認知される存在となったのではないでしょうか。私自身は2年ほど前に「アンビリーバーズ」がラジオでヘビロテされた辺りでちゃんと存在を認識くらいで、それほど詳しい訳でもなかったのですが、4thアルバム「BOOTLEG」は購入しました。

 

 今回なぜ爱丽丝という曲を殊更取り上げるか、というよりそもそもBOOTLEGの購入の動機が爱丽丝が収録されているから、なのですが、では何故そんなに爱丽丝を聴きたかったのかというと(御察しの方もいるかもしれませんが、以前別記事でちらっと申し上げたように、私は八十八ヶ所巡礼というバンドが好きなので)八十八ヶ所巡礼のベースボーカルであるマーガレット廣井さんがベースで参加されているからという理由ですね。

 

爱丽丝 に携わったメンバーは作詞作曲に米津玄師さん、編曲及びギターにKing Gnuの常田大希さん、ベースに八十八ヶ所巡礼のマーガレット廣井さん、ドラムに元パスピエの矢尾拓也さんという飲み友メンバーで構成されています。新進気鋭感が凄いね!

 

この楽曲、構成メンバーがお友達というエピソードによる周縁的な付加価値がなくても(つまり、ビジネスライクに召集されただけのメンバーだったとしても)十分聞き応えのある面子です。米津さんは言わずもがな、King Gnuは今キているバンドとしてCHAIと双璧をなすような存在になっているし(多分)、八十八ヶ所巡礼は業界内評価がめちゃくちゃ高いバカテクバンドです。(残念ながら私は矢尾さんについてあまり存じ上げないので、この後の文章には殆ど出て来ません。申し訳ありません。でも仲いいですよね)

おそらくなのですが、このメンバーは色々な音楽家の中でもかなり独自の個性を持つ、ある意味癖が強いタイプの人達のように思います。普段から歌を歌っていたり、それぞれのバンドの中心メンバーだったり。爱丽丝という曲の素晴らしい所は、それぞれのメンバーの独自性が失われる事なく、一つの楽曲として融合している点です。

米津さんは、ストレートに爽やかだったり美しい感じの毒気のない歌詞も書かれますが、ちょっと衒学的で幻想的なタームを使ったシニカルなタイプの歌詞を書かれるイメージがあり、本作はまさにその方向性となっています。サウンドも歌詞の世界観に合った、これまでの米津さんのイメージと齟齬のない曲調です。

八十八ヶ所巡礼の曲は、リズムを刻むというより旋律を作っているようなうねるベースラインが特徴的なのですが、本作でも遺憾無く発揮されています。敢えて他人の名義の曲だから特徴を矯める、という事がされていません。

冒頭のベースが端的に特徴を表している、且つ色々な意味で最も癖が強そうな動画はこちら。


八十八ヶ所巡礼 「攻撃的国民的音楽」

 

ギターについてはマジでKing Gnuです。めっちゃKing Gnu(語彙力)。何がと問われても説明出来ませんが音色でしょうか?取り敢えずYouTubeとかでKing Gnuの曲数曲聴いて下さい。取り敢えずこの曲とか。

 


King Gnu - Tokyo Rendez-Vous

 

2番が終わった後の間奏部分の事をハイパーキングヌータイムと命名しています。ここだけを聴いてKing Gnuの曲と言われたら納得しそうです。

曲全体としては米津作品なのにベースはマーガレット廣井だしギターはKing Gnu!!※4 なんか凄い事が起きている気がする。(語彙力) 

元々「誰某が他の誰某のレコーディングに参加!」という類のニュース、盛り上がってていいなとは思いつつ、その価値はいまいちピンときてなかったんですよ。私の耳が悪いだけなんですけど、そこまで個々のプレースタイルがどうとか音源だけで聞き分けられないし、平素がそれならコラボした時の機微みたいなニュアンスみたいなのも分からないし。

でも逆にここまで個性の強い人々がそれをそのままぶつけてきたら流石にわかります。こういうの化学反応などというのでしょうが、寧ろ何でちゃんと一曲に綺麗に纏まるの?という驚嘆を覚えます。

ここまで来て矢尾さんのドラムについて何も言えないのが悔しくなってきたので聴こうかと思うのですが昔のパスピエを聴いたら良いのん?

以前に伊坂幸太郎さんと阿部和重さんが共著「キャプテン・サンダーボルト」を執筆した時のエピソードで、「お互いが最初に書いたパートにもどんどん修正をかけたので、どの部分がどちらとかは分からない、霜降り状態」と仰っていたのが面白かったのですが、曲の場合最終的な役割が分かれているのでどういう表現が適切なんでしょうか。サラダボウルでもメルティングポットでもないし、あれです、鮪とアボカドとクリームチーズを出汁醤油と辣油で和えたやつですね。

 

ここまでが掲題の「攻めてて格好いい」についてでしたが、ここから「圧倒的な飲み友感」について述べて行きます。駄文を極めていきますので、真っ当な歌詞解釈をお読みになりたい方は下記のブログを参考になさってください。

yonefreak.com

 

全体としては「不思議の国のアリス」※5 をモチーフにした米津節を強く感じる歌詞なのですが、注目すべきはサビの部分です。

曖昧な意識で彷徨った 摩訶不思議なアドベンチャー

虚しさを抱えたまんま 愛を使い果たした

何の話をしていたっけ フラついて零したブランデー

全てを明日に任せて踊ろうぜもっと      

 

確実に飲み会が開催されている…ような気がする!

「曖昧な意識」、飛ばし飛ばしの記憶にループする話題、制御し損なった身体、「ブランデー」。数ある酒類の中からブランデーというところがお洒落ではありますが、それにしても米津さんが飲酒をモチーフにした曲を書くとは思いませんでした。

酒の歌は世の中に数あれど、コンスタントに飲酒がモチーフの曲をリリースしているバンドといえば八十八ヶ所巡礼を置いて他に居ません。とはいえ、マーガレット廣井さんも八十八ヶ所巡礼名義ではない活動で、酒を前面に押し出してはいないはずです。今回は米津さん名義の曲で米津さんが作詞をする訳ですから、酒要素など全く期待していませんでした。

ところが蓋を開けてみれば飲酒の歌。何という酒に関する引きの強さ、安定感。ありがとう米津さん。ありがとう飲み友。

と、まあ巫山戯た感想を持ったのですが、結果的に廣井さんが外部でも飲酒の歌に携わった妙もさることながら、やはりこの曲を作ったメンバーが飲み友だったという事、飲み友たちがコミュニケーションをとりながらプロの仕事をして格好いい曲を作ったという事が有難い限りです。そもそも私はBOOTLEGの中で、純粋に曲調だけで言っても爱丽丝が一番好きなんですよ。飲み友とか関係なく、好きな音楽家達で作った曲だったらそれは気に入るに決まっています。…何の話をしていたっけ。話がループしている。酩酊してないのに。

 

 

※1 ヒトカラ専門店だと部屋が狭くヘッドフォン式で歌うことになるので、一般的なカラオケの方が快適

※2 カラオケ再生だとKing Gnu色の強いギターの音色が引っ込みベースラインが際立つ。また歌う際に歌詞の詳細やどんな字面なのかを改めて知る事が出来て味わい深い

※3 私の中でアンナチュラルの脚本が素晴らしすぎたのでどうしてもlemonという楽曲単体での評価が出来ません

※4 この一文で個人名とバンド名どちらにするか統一しなかったニュアンス伝わりますでしょうか。そもそも常田さんが編曲をしている上に、ギターという楽器の音自体が耳に付きやすいからではあるのですが、何となくKing Gnuはまあ常田さんのバンドだろうし、八十八ヶ所巡礼は三人揃ってこそだろう、というイメージがあります

※5 爱丽丝という曲名は友人である水墨画家のCHiNPANさんのタトゥーシールから付けられた、との事ですがCHiNPANさんは八十八ヶ所巡礼の楽曲「金土日」のMVに文字提供をされています